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深谷 有喜; 河裾 厚男; 林 和彦; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 237(1-4), p.29 - 33, 2004/10
陽電子に対する結晶中の屈折率が1以下であるため、陽電子ビームは、臨界角以下の表面すれすれの角度で入射させると全反射を起こす。全反射領域における回折波は、結晶内部にほとんど進入することができないため、最表面の原子位置・熱振動の情報のみを反映していると考えられる。したがって、全反射領域における陽電子回折強度を解析することにより、最表面の構造・物性に関する情報を選択的に得ることができる。本講演では、シリコン(Si)の(111)の最表面原子の熱振動の振る舞いに注目し、反射高速陽電子回折(RHEPD)強度の測定及び強度解析を行った。初めに動力学的回折理論に基づくRHEPD強度計算を行った。結晶表面のデバイ温度を一定として、バルクのデバイ温度を変化させてRHEPD強度の温度依存性を計算したところ、全反射領域における回折強度は、バルクの熱振動には全く影響されないことが確かめられた。以上のことにより、全反射領域におけるRHEPD強度が真の表面デバイ温度を決定するうえで非常に有効であることがわかった。講演では、全反射領域におけるRHEPD強度の実測値と計算値との比較から、Si(111)表面の最表面原子の熱振動の振る舞いについて報告する。
林 和彦; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 237(1-4), p.34 - 39, 2004/10
反射高速陽電子回折(RHEPD)では、結晶ポテンシャルが正であるため、全反射が観察される。全反射領域では、陽電子は最表面原子で回折されるため、多重散乱の効果が無視できると期待される。その場合、RHEPD強度は運動学的な計算で解析できると考えられる。本研究において、実験で得られたRHEPDパターンを運動学的な解析結果と動力学的な解析結果と比較することで、運動学的な解析の有効性について調べる。実験は、Si(111)77表面に20keVの陽電子を入射させて行った。この実験系では、臨界角は1.4である。全反射領域では、1/7, 2/7, 3/7ラウエゾーンのスポットが明るく、特に(0, 1/7)から(5/7, 6/7)あたりのスポット,(9/7, 10/7)スポット,(8/7, 10/7)スポットの強度が強い。運動学的及び動力学的な計算結果からも、これらのスポットの強度が強くなる結果が得られた。運動学的な計算において、考慮する原子数を単位ユニット内の200個から最表面原子の90個に減少しても、その結果に大きな変化はなかった。これは、陽電子の回折が最表面原子でおもに起きていることを示している。これらの結果から、RHEPDにおいて運動学的な解析は有効な方法であると考えられる。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; Nath, K. G.
Applied Surface Science, 237(1-4), p.176 - 180, 2004/10
被引用回数:9 パーセンタイル:43.95(Chemistry, Physical)炭化ケイ素(SiC)はシリコンに代わる次世代の半導体物質として期待されている。SiC薄膜の製造法の一つに、有機ケイ素化合物を用いた蒸着法が知られており、ミクロンオーダーの厚みを持つSiC薄膜が合成されている。本研究では、ナノメートルオーダーの厚みを持つ極薄SiCの構造を調べるため、テトラメチルシランを放電気体として用いたイオンビーム蒸着法により1原子層以下のSiCをグラファイト上に堆積させ、その電子構造を放射光光電子分光法,X線吸収微細構造法により調べた。その結果、0.1ナノメーターの厚みの蒸着層を850Cまで加熱すると、バルクのSiCと異なった二次元構造を持つSiCが生成することがわかった。この物質のX線吸収微細構造スペクトルの偏光依存性を測定したところ、Si原子周辺に*軌道的な性質を持つ軌道が存在し、この*軌道が表面に垂直であることがわかった。このことから、得られたSiC膜は、グラファイトと同様な二次元状の構造をとることが明らかとなった。
高橋 正光; 米田 安宏; 水木 純一郎
Applied Surface Science, 237(1-4), p.219 - 223, 2004/10
被引用回数:5 パーセンタイル:29.73(Chemistry, Physical)その場表面X線回折法により、GaAs(001)-再構成表面を詳しく調べた。試料は、他の解析用真空槽に搬送することなく、分子線エピタキシー条件下でそのまま測定に付した。一定のAs圧下において、GaAs(001)-構造の相に相当する範囲内で基板温度を上げていきながら、多数のX線回折パターンを測定した。545Cまでの比較的低い温度では、測定されたX線回折パターンは2(24)表面とよく一致した。しかしながら、585Cでは、周期性をなお保ちながら、2(24)とは異なる回折パターンが得られた。この変化は、Asダイマーが一部脱離し、2(24)と2(24)とが混在した表面になったことにより説明できる。
粕壁 善隆*; Wang, J. J.*; 山村 力*; 山本 春也; 藤野 豐*
Thin Solid Films, 464-465, p.180 - 184, 2004/10
被引用回数:9 パーセンタイル:43.95(Materials Science, Multidisciplinary)チタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性まで変わる不定比化合物チタンは、次世代のデバイス材料として応用が期待されている。本研究では、TIARA施設のイオン導入型電子顕微鏡を用いて、窒素をイオン注入しながら組成とともに変わるチタンと窒素の結合状態のその場観察を行い、窒化チタン膜の成長機構を追求した。超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜(hcp-Ti)を作製し、その薄膜を350Cに加熱しながら62keVの窒素イオンの注入を行った。透過電子顕微鏡法で窒化チタンの成長過程を評価するとともに電子エネルギー損失分光法により電子状態を評価した。窒化による電子状態の変化をプラズモンによる損失エネルギーの評価と分子軌道計算を用いて検討した結果、窒素の注入量の増加とともにTi-Ti結合が急激に弱まり、新たにできた強いTi-N結合がhcp-fccの変態を誘起し、TiNが形成されることがわかった。
Wang, J. J.*; 粕壁 善隆*; 山村 力*; 山本 春也; 藤野 豐*
Thin Solid Films, 464-465, p.175 - 179, 2004/10
被引用回数:1 パーセンタイル:7.1(Materials Science, Multidisciplinary)チタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性まで変わる不定比化合物チタンは、次世代のデバイス材料として応用が期待されている。本研究では、窒素をイオン注入する前のTi薄膜の昇温過程における構造変化及びイオン注入による窒化過程についてTIARA施設のイオン導入型電子顕微鏡を用いて観察を行った。超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜を作製し、その薄膜を350Cまで加熱しながら、透過電子顕微鏡法で結晶構造を評価するとともに電子エネルギー損失分光法により電子状態の評価を行った。蒸着チタン薄膜には、hcp-Tiのほかにチタン水素化物(TiH)も含まれていることがわかり、このTiHは350Cまで加熱すると、fcc-Ti副格子の四面体位置の水素原子が脱離し、水素が脱離したfcc-Ti副格子がhcp-Tiに変態することを明らかにした。さらに、62keV窒素イオンの注入を行い、透過電子顕微鏡法により構造変化の観察を行った結果、窒素の注入量の増加とともに(001)及び(110)面に結晶配向した窒化チタンが成長することがわかった。